火口のふたり

直木賞作家「白石一文」の同名小説を映画化した官能ドラマ。R１８指定のハードなセックス描写で知られ、ヒロインの直子役を演じたアラサー女優「瀧内公美（たきうちくみ）」の出世作となった一本である。本編は、結婚を間近に控えたヒロイン「直子（瀧内公美）」とかつての恋人「賢治（柄本佑）」による「道ならぬ恋（浮気）」をテーマとしている。部屋で偶然見つけた昔のアルバム（行為中の写真）をきっかけに性欲のスイッチが入る二人。「今夜だけ・・・あの頃に戻ってみない？」すべてを脱ぎ捨て、一糸まとわぬ姿となった公美嬢。下半身全体に「ボカシ（モザイク処理）」が入るレベルの壮絶な濡れ場。ムスコを酷使しすぎた賢治がトイレ休憩中に「強烈な痛み」を覚えるシーンは、なんとも印象的である。以降は、濡れ場と食事シーンの合間に「申し訳程度のストーリー（富士山噴火の危機）」が添えられるスタイル。ここまで「話が入ってこない映画」も近年まれ。日本消滅の事態にヤケクソになった二人の「（どうせ死んじゃうんだから）中へ出していい？」「いいよ」のセリフ（＋富士山の噴火音）で幕切れとなるエンディングのシュールさ。男女のツインボーカルが「とっても気持ちいい～」を連呼するギャグ同然のテーマ曲。この「エロ」と「バカ」に振り切ったカルト映画が２０１９年度のキネマ旬報「日本映画ベストテン第１位」に選出される「嘘のような本当の話」も含めて、実に「語りがいのある作品」といえる。パンツを脱ぐタイミングまで細かく指示した荒井晴彦監督の「こだわり」も（いい意味で）常軌を逸している。