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幕末の頃、北海道が蝦夷と呼ばれて松前藩の支配下にあったとき、国禁の密貿易船が、この近海に出没するので、これに手入れを行うことになった。藩の横目付三木原伊織は、廻船問屋赤崎屋吾兵衛をその首魁と見たが、家老蠣崎は、八幡屋六右衛門が犯人だと主張して、自分の腹心の部下を使って八幡屋を斬って捨てさせ、その屋敷を焼き払った。その上自分と赤崎屋の正体を見抜いた伊織を殺そうとした。しかし伊織は一人のアイヌに助けられ危地を脱した。八幡屋の一人娘いとも、うさぎの惣吉という元の使用人に救われ、伊織と共にアイヌに導かれて原始林の中の洞窟へ行った。そこで伊織たちはそのアイヌが、土屋主水正という幕府の巡検使副使で、一年前に松前へ来て、蠣崎一味の悪事を知って、その確証を持って江戸へ急ぐ途中、蠣崎の手先に使われたアイヌの混血芸者おみつのために毒殺されかけ、またみつの情夫流山桐太郎に斬り殺されそうになったが、危く逃れ、再びアイヌに変装、松前へ入り込んだ事情を聞かされた。彼は伊織といとと惣吉という証人を、江戸へ連れて行けることを喜んだが、蠣崎の手下に伊織といととを奪い返されてしまった。主水正はまた伊織たちを救いに蠣崎邸へ忍び込み、そこでおみつや桐太郎に行き合った。桐太郎は死んだと思った主水正の生きていることを怒り、おみつは内々心を寄せていた主水正の生きていることを喜んだ。主水正と伊織は逃れて万昌院という寺に隠れた。惣吉はいとを救い出そうとして重傷を受け、万昌院まで辿り着いて死んだ。その夜主水正は再び単身蠣崎邸へ乗り込んでいとを救おうとしたが、いとは裏切りを知られたみつと一緒に郊外に移され無頼の徒の自由にされようとしていた。主水正は二人を危機寸前に救い出した。いとはみつが自分をかばってくれるために重傷を負ったことや、みつの主水正に対する真情などを語った。この時津軽へ渡る船便のあるのを知って、主水正一行はみつも加えて途中の警戒を突破し、船へ乗り込んだ。しかし、これも蠣崎一味の罠で、密貿易船雷神丸の偽装であった。桐太郎が誤ってみつを刺したのを機会に、主水正と伊織とは奮戦し、みつが求めたアイヌの救援によって危く船からはしけ舟で脱出することが出来た。その時雷神丸は桐太郎の仕掛けた爆薬で宙に消し飛んだ。主水正一行ははしけ舟で、無事に津軽へ渡り、江戸へ向って出発したのであった。
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作品コメント
幕末の頃、北海道が蝦夷と呼ばれて松前藩の支配下にあったとき、国禁の密貿易船が、この近海に出没するので、これに手入れを行うことになった。藩の横目付三木原伊織は、廻船問屋赤崎屋吾兵衛をその首魁と見たが、家老蠣崎は、八幡屋六右衛門が犯人だと主張して、自分の腹心の部下を使って八幡屋を斬って捨てさせ、その屋敷を焼き払った。その上自分と赤崎屋の正体を見抜いた伊織を殺そうとした。しかし伊織は一人のアイヌに助けられ危地を脱した。八幡屋の一人娘いとも、うさぎの惣吉という元の使用人に救われ、伊織と共にアイヌに導かれて原始林の中の洞窟へ行った。そこで伊織たちはそのアイヌが、土屋主水正という幕府の巡検使副使で、一年前に松前へ来て、蠣崎一味の悪事を知って、その確証を持って江戸へ急ぐ途中、蠣崎の手先に使われたアイヌの混血芸者おみつのために毒殺されかけ、またみつの情夫流山桐太郎に斬り殺されそうになったが、危く逃れ、再びアイヌに変装、松前へ入り込んだ事情を聞かされた。彼は伊織といとと惣吉という証人を、江戸へ連れて行けることを喜んだが、蠣崎の手下に伊織といととを奪い返されてしまった。主水正はまた伊織たちを救いに蠣崎邸へ忍び込み、そこでおみつや桐太郎に行き合った。桐太郎は死んだと思った主水正の生きていることを怒り、おみつは内々心を寄せていた主水正の生きていることを喜んだ。主水正と伊織は逃れて万昌院という寺に隠れた。惣吉はいとを救い出そうとして重傷を受け、万昌院まで辿り着いて死んだ。その夜主水正は再び単身蠣崎邸へ乗り込んでいとを救おうとしたが、いとは裏切りを知られたみつと一緒に郊外に移され無頼の徒の自由にされようとしていた。主水正は二人を危機寸前に救い出した。いとはみつが自分をかばってくれるために重傷を負ったことや、みつの主水正に対する真情などを語った。この時津軽へ渡る船便のあるのを知って、主水正一行はみつも加えて途中の警戒を突破し、船へ乗り込んだ。しかし、これも蠣崎一味の罠で、密貿易船雷神丸の偽装であった。桐太郎が誤ってみつを刺したのを機会に、主水正と伊織とは奮戦し、みつが求めたアイヌの救援によって危く船からはしけ舟で脱出することが出来た。その時雷神丸は桐太郎の仕掛けた爆薬で宙に消し飛んだ。主水正一行ははしけ舟で、無事に津軽へ渡り、江戸へ向って出発したのであった。