サンバーン

この映画「サンバーン」は、TVの「チャーリーズ・エンジェル」で人気絶頂だった、ファラ・フォーセット・メジャーズの主演映画で、原作はスタンリイ・エリンの「空白との契約」だ。

原作の小説があまりにも面白かったので、その映画化作品を見てみることにした訳だが、だいたい美人女優の出演する映画は、あまり面白くないとの定説があるが、ところがどうして、どうして、なかなか快調なアクション・ミステリーに仕上がっていると思う。

敵役のキャラクターが、はっきりしないのは小説と違って映画の場合は、仕方がないとして、「ミッドナイト・ラン」のチャールズ・グローディンと「ハリーとトント」のアート・カーニーが演じる探偵コンビが、実にいい味を出している。

そして、この映画がアクション・ミステリー映画として成功した理由は、ファラ・フォーセット・メジャーズを、あくまで添え物にした点だと断言出来る。

スタンリイ・エリンの傑作ハードボイルド・ミステリーの「空白との契約」の映画化であるこの作品は、500万ドルの保険に入っていた男が交通事故で死に、その調査にアカプルコに探偵が乗り込むところから、開幕する。

ファラ・フォーセットはその探偵の助手という役どころだ。現地の人間関係が映画だと、今ひとつはっきりしないが、「バニシング・ポイント」を撮って、今やアメリカン・ニューシネマの伝説的な監督になった、リチャード・C・サラフィアンの演出のテンポが早く、その疑念を抱く頃には、もう映画は終わっているという案なのだ。

原作がハードボイルド小説なので、謎の真相も少し重いし、カーチェイスもあるという、ハードなストーリーなのだ。
それなのに、ファラ・フォーセットの恐怖のニカ笑いが出る度に、突如、ハリウッド調の人工的な恋愛映画になってしまうのは、実におかしかった。

口を閉じていれば絶世の美女も、あの大口を開けて歯をむき出しにすると、バランスが崩れて、何ともしまりのない女に変わってしまうのだ。

もっとも、ジョーン・コリンズ演じる情熱的な人妻に見られるように、ユーモラスなタッチが他にも多いので、あるいは、これはリチャード・C・サラフィアン監督の演出上の計算なのかも知れない。

そのような全編を貫くユーモア・タッチが、アクション映画の中で生きていて、まずまず楽しめる出来に仕上がっていたと思う。