黒いジャガー/シャフト旋風

この映画「黒いジャガー シャフト旋風」は、1970年代初頭に”ブラック・パワー”の抬頭に呼応して、アメリカ映画界に黒人の一匹狼的なヒーローが、頑張って白人の悪党どもをやっつけるという、”ブラックスプロイテーション・ムービー”の一大ブームが巻き起こった中の1本です。

この映画は、「黒いジャガー」の続編で、ニューヨークの黒人街ハーレムの黒人の私立探偵シャフトが、前作に続いてハーレム内で起こった事件をめぐって大活躍します。

当時、日本ではたいして評判にならなかった「黒いジャガー」第1作目は、アメリカでは大ヒットとなり、その余勢をかって、シリーズ第2弾として製作されたのが、この「黒いジャガー シャフト旋風」なのです。

シリーズものは1作目よりも後続する作品が、つまらなくなるのが普通ですが、これは、007シリーズと同じで、ぐんとスケールも大きく、面白さもパワーアップしています。

黒人の子供たちの病院を作るための資金が何者かによって盗まれますが、それには黒人の悪党と白人のギャング団が絡んでいました。
シャフトの捜査は力には力でぶつかる主義で、殴られたら殴り返す、撃たれれば撃ち返すという主義に貫かれているのです。

これは、昔からの白人が主演するハリウッド映画のヒーロー物をそっくり引き継いで、黒人がそのヒーローを演じているのです。
おまけに、黒人同士のベッドシーンやら黒人のためのナイトクラブなど、白人のギャング映画の道具立ても全部揃っているのです。

そして、この映画の白眉は何といっても、ラスト30分近い追っかけのシーンで、「ブリット」クラスの出来栄えで迫力十分です。車からモーターボートに乗り継いだシャフトを、空から、陸から追い詰めていくアクションは手に汗握るスリル満載で、このシーンだけでも見応えがありますが、あげくの果てには逃げるシャフトを白人のギャング団のヘリコプターが造船所のドッグの中まで追って来て、それを逃げながらシャフトが、自動小銃で撃墜するクライマックスは壮烈で圧巻です。

とにかく、面白ければ何でもやってしまえとばかりに、惜しげもなく物量をつぎ込んで、痛快にぶっ壊していく、そのサービス精神には驚かされました。

”ブラックスプロイテーション・ムービー”、恐るべしです。