素晴らしき放浪者 HDマスター

横笛の音。中年男が若い女を口説いている。天気の良い昼、樹の下で浮浪者が黒い犬を遊ばせている。飯のジャマだ、と追い返し歌いながら硬いパンを食う。逃げた犬を探す。放浪者（M・シモン）は町を歩き、河の中へ飛び込む。人だかりの中、中年男が泳いで行き、溺れかけた彼を助けてマッサージする。ようやく気づいたヒゲ面の彼は「人生はくだらん」と言う。彼の名はブーデュといった。中年男の家で着替えてイワシとバターパンを食べる。今夜のねぐらはここでいいと言われ、宝くじを１枚もらった。夜、屋上に猫がいる。ブーデュはベッドから出て床の上で寝る。翌日、朝食で水の入った盆をひっくり返す。女房や女中が呆れ果て中年男に「礼儀をわきまえてくれ」と言われる。上着を着たブーデュは女中に「ヒゲを剃って気に入ったらキスしてあげる」と言われ、床屋へ行ってくる。台所を水浸しにして、大切なバルザックの本にツバをかけられ中年男は彼を追い出すことにした。ヒゲを剃ったブーデュは女中に力ずくでキスをした。人命救助の勲章を中年男はもらうことになった。ブーデュは宝くじで10万フラン当てた。彼は女中のアンナと結婚した。演奏の中、ボートで下る皆は途中で転覆し、ブーデュは流され濡れた燕尾服のまま１人で陸に上がった。そして案山子の服に着替え、パンとバターをもらい、山羊の側で歌いながらパンを食うのだった。最後に穏やかな河の風景が映る。ジャン・ルノワール監督。J・ルノワールは白熊さんというあだ名を持っていた程、おおらかな人だった。この作品はいかにもフランスらしい自由な精神を持っている。