西遊記（1978） 2

映像作品として大ヒットしたこの西遊記だが、三蔵法師の弟子の一人、沙悟浄については謎めいた部分がある。元は天界の大将であったが零落し、川底に潜み人間を襲っては食らう妖怪へと変じたという。まるで河童である。


”元々は天界の役人で捲簾大将（けんれんたいしょう）。天帝の御側役の一人で、霊霄殿（れいしょうでん）で謁見を求める者が罷り出た時に、天帝の前の御簾の側にいて、天帝と謁見を受ける者の間に入り、天帝を守護する役目。近衛兵の大将であり、「霊山の大将」と称される。
蟠桃会のおりに、天帝の宝である玻璃の器を手を滑らせて割ってしまった罪で天界を追われた。鞭打ち800回の刑を受けて下界に落とされ、さらに7日に1度は鋭い剣を飛ばして脇腹を貫くという罰を受け続け、飢えと寒さから三千里もあるという弱水の流沙河で人を喰らう妖仙となった。”　　　


沙悟浄は首に９個の髑髏を掛けているが、実はこれらは、すべて三蔵法師の前世の髑髏だという。

”三蔵法師は下界に転生させられてから九回も西天取経を志し、且ついつも流沙河で立ち往生したあげく沙悟浄に取って喰われていた――”

つまり、西遊記の話では、玄奘三蔵は９回、沙悟浄に行く手を阻まれ、その都度食われて、再び同じ自己に転生し、西天取経に向かったということである。
９回も同人物の徳の高い僧を獲って喰う沙悟浄も全くもって気味が悪いが、何度でも立ち向かう三蔵も恐るべき執念である。

同じ悲劇的運命が何度巡り来ても、決して後悔することなく信じた道を突き進む、まるでニーチェの永劫回帰だが、１０回目には遂に然しもの沙悟浄も三蔵法師の軍門に下るのであった。